経営者ナビ >> 会社の税務・節税 >> 社用車の耐用年数の解説
ひと昔前の話になりますが、以前は社長の車と言えばベンツという認識があった時代がありました。
これはベンツが高級車という意味もありますが、実は節税対策としても年度落ちの高級車が数多く売買されていた経緯もあります。
私の知人でトヨタの営業(今は管理職)をしていた友人は、経営者の場合数年落ちの中古車の需要が高いと言っていたのを覚えておりますが、今ならばその理由も理解できます。
今回は節税対策としても活用される社用車の耐用年数、そして損金計上の仕組み、更に最も効率の良い購入時期について確認していきましょう。
目次
社用車とは、原則として営利を目的とした会社の営業活動を行う際に必要となる会社名義で購入する車のことを指しております。
このように、会社の営利活動を行うという目的を達成するために必要となる費用は当然、必要経費として計上する事が可能となっております。
尚、これは「個人事業主」であっても同様です。
但し、個人事業主の場合は法人と比較すると耐用年数が異なるケースが出てきます。(理由は後述します)
もちろん個人の趣味用として使用する自動車は経費化の対象外となります。
しかし、車の用途が仕事で利用する事が明確である場合は法人だけでなく個人事業主でも自動車の購入費用を必要経費として計上することが可能となっております。
会社で自動車を購入する、もしくは社用車を買い換える際の理由は、「営業活動の円滑化」という作業の効率化を計る目的の他にも、利益の大きく上がる年度の「節税対策」を一つの目的として自動車の購入を検討するケースがあります。
比較的高額経費となるものには、この「自動車」と「不動産」及び「不動産付帯設備」がありますが社用車を購入することで利益の幅を縮小し法人税などの納税額を節税することが可能となるためです。
自動車の法定耐用年数は現在のところ6年間となっております。
要は6年間で「減価償却」を行うように設定されている「減価償却資産」になります。
但し、この6年間という耐用年数は新車を購入した場合の法定耐用年数です。
これは事業目的で社用車を通常使用した場合に6年間はもつだろうと計算されることを意味しております。
しかし、中古の社用車を購入した場合は、新車を購入した場合と比較すると自動車の価値が目減りしている事は明らかです。
稀にプレミアムがついて中古車であっても高額な価値を持つ場合もありますが、一般的には新車は中古車よりも価値が高いという概念です。
その為、中古車で社用車を準備する場合は、6年という社用車の耐用年数を元にして、残存する残りの耐用年数に一定の計算を行い算出した年数で減価償却する形となっております。
節税関連の書籍には決まって「4年落ちのベンツ」というキーワードが登場します。
しかし、社用車として購入する場合、何故4年落ちのベンツに人気が集まるのでしょうか?
この原因には耐用年数の計算のからくりが潜んでおります。
ここからは4年落ちの高級車に注目が集まる耐用年数のからくりについて確認していくことにしましょう。
新車の社用車の耐用年数は6年間であるというのは前項で解説してきた通りです。
では新車ではなく中古車の場合の耐用年数はどのように耐用年数を算出すると良いのでしょうか?
実は社用車として中古自動車を購入する場合は、大半の場合以下の簡易的な計算式で耐用年数を算出することができます。
【耐用年数の計算式】
(6年 - 経過年数) + 経過年数×0.2
※小数点以下は切り捨て
その為、上記計算式に当てはめて1年落ち~6年落ちまでの耐用年数を計算すると以下のようになる事がわかります。
1年落ち⇒(6-1) + 1×0.2=5.2(5年)
2年落ち⇒(6-2) + 2×0.2=4.4(4年)
3年落ち⇒(6-3) + 3×0.2=3.6(3年)
4年落ち⇒(6-4) + 4×0.2=2.8(2年)
5年落ち⇒(6-5) + 5×0.2=2.0(2年)
6年落ち⇒(6-6) + 6×0.2=1.2(2年)
社用車を購入する場合は、前項の耐用年数の計算式を意識して会社の節税を計ることが可能です。
節税は会社の無駄遣いを省くという意味合いもあり、利益が大きく出る年度に古くてそろそろ故障が相次ぎそうな社用車を新しい社用車に買い換えておくことは将来的な設備投資に繋がる可能性もあります。
尚、耐用年数の計算式の最後の6年落ちの部分の計算が2年になっているのは、耐用年数の最小年度が2年と設定されているためです。
その為、個人事業主の場合は4年落ちでも6年落ちでも、仮に10年落ちであっても社用車として自動車を購入する場合は2年で償却する事になります。
個人事業主と法人の減価償却の計上は法定耐用年数が同じであっても1年目に経費化できる額に違いが生じる点を把握しておく必要があります。
※個人事業主の場合は4年落ち以降の社用車から2年で償却可能
個人事業主の場合の社用車の償却は最短で2年でした。
しかし法人の場合は減価償却法の「定率法」を使用することが可能となります。
これが先ほど説明した1年目に経費化できる額に違いが生じる理由です。
減価償却資産の償却には「定額法」と「定率法」がありますが個人事業主の場合は定率法で減価償却することは認められておりません。
尚、定率法を用いて減価償却を行う場合は税法で定められている「償却率」を用いて計算を行います。
先ほどの中古社用車の耐用年数の計算方法では、4年落ちから2年となっていますが、耐用年数2年の償却率は100%と決められております。
これは減価償却年数が2年の資産は全額1年目に経費にすることが可能であるという事を意味し、法人設立のメリットと言っても良いでしょう。
そのため、償却率を元に4年落ちより古い社用車は全て1年目から全額損金として計上する事が可能となる訳です。
この事からも大きな必要経費が欲しい場合に、資産価値の高いベンツであれば4年落ちであっても高い金額がつく事から節税対策として人気があるという事がわかります。
また、車種の人気にもよっても異なりますが人気の車種の場合は値崩れも小さい傾向にあり、場合によってはプレミアムが付き価値が高まるような車種も存在します。
その為、人気車種であれば思いもよらない節税以上の効果をもたらすケースも実際に稀にあります。
社用車はベンツが人気ですがベンツに限らず国産車の日産GT-RやホンダNSXなどの高額な車両でも構いません。
しかし、会社の顔でもある社長や専務クラスの取締役であればベンツというのも頷けますが、スポーツカーとなると会社の利益(イメージも含め)に貢献すると判断されるかどうかは別の話です。
4年落ちのベンツはこのような意味でも経営者や役員クラスが乗る車としてのイメージが定着している点でも人気が高まっているのかもしれません。
一般的にベンツが役員クラスの車として市場にイメージが定着している点は経費化という観点からみると無難な選択となり得ます。
これは社用車としてベンツが選ばれる隠れた人気の理由のひとつと言えるかもしれません。
法人で節税を意識した社用車の購入を検討している場合は購入するタイミングについても注意が必要です。
ここまで解説してきた通り4年落ちの中古車は法人の場合1年目に全額経費計上する事が可能です。
しかし、経費として計上できる金額は減価償却資産購入後の「経過月数」を確認し使用した期間分のみしか損金計上することができません。
例えば期首が9月、8月末決算の会社が7月に600万円の中古車を2台購入したとします。
7月になり、今期は想定以上に利益が上がることがほぼ確実視される状況になってから節税目的として社用車を購入した場合、当期計上できる額は7月と8月の2ヶ月間分しか認められません。
600万円の社用車ですから今期計上できる金額は
600(車両価格)÷12(月)×2(使用月数)=120万円
となり社用車は2台購入しているので、このケースでは240万円は今期の経費として計上できますが、残りの960万円は翌期に経費計上しなくてはならないという事です。
ですから法人で節税を意識した社用車の購入を検討している場合の社用車のベストな購入タイミングは「期首月」となります。
今回の事例のケースでは9月が期首ですから9月に社用車を購入した場合に経過月数が12ヶ月となり1年目から経費計上したい場合に最大の節税効果が得られる事が解ります。
但し、長年会社を経営している場合は今期の売上予測もある程度立てることが可能かもしれませんが、会社を設立してまだ数年という場合は期首に大きな出費をすることが大きなリスクとなる可能性もあります。
節税対策として社用車の購入する場合は、経営にある程度慣れ経営者として経験を積んでから検討しはじめると良いかもしれません。