経営者ナビ >> 決算書の読み方 >> 損益計算書の見方の解説
目次
損益計算書は、決算の際に作成される財務諸表の中でも会社の営業状況、利益、いわゆる会社がどの程度儲かっているのかを示す重要な財務諸表です。
会社、法人が設立される根本的な目的は、営業活動によって利益を産み出すことが最低限の目的にあり、しっかり利益を作り「納税」を行うことが求められております。
法人はこのように営利を目的とする複数の個人による集団組織、もしくは個人組織となっているのはその為です。(営利を求めない組織は非営利組織としての法人を設立することとなります)
中でも決算書の3本柱、財務3表とも呼ばれる、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」は会社の営業活動状況を示す重要な財務諸表となっております。
損益計算書は両サイドに項目と金額が記載されている貸借対照表とは異なり、縦長の表で5つの区分に項目が分類されて計算書が作成されている点が重要なポイントです。
この5つの区分にわかれている理由は、5つの利益の金額を示すことによって、会社の財務状況をより解りやすく掲載し、財務分析などが容易に行えるようになる利点があるためです。
尚、損益計算書の上から順に5つの利益を計算し最終的に「当期純利益」を計算する流れとなっている点がひとつの特徴でもあります。
これから会社の設立を検討しており、決算書の学習を始めたばかりのケースや、会社の設立後初めての決算を迎えたばかりの経営者の場合は、損益計算書に記載されている多くの数字がやや難しく感じられるかもしれません。
損益計算書がどうもとっつきにくい計算書と感じる最大の理由は、「会計の専門用語」が1枚の財務諸表に多く記載されている点にあります。
特に営業には自信があり、販売力があるワンマン経営者などの場合は、決算関係は全て税理士任せで、とにかく営業活動に従事しているようなケースも多くあります。
しかし、経営者の本来の仕事は財務諸表を基本として継続的に当期純利益を積み重ねて行く事でもありますので、やはり損益計算書を代表とする財務諸表をしっかり把握しておくことが大切です。
尚、損益計算書の読み方を簡単に覚えるコツは、5つの項目をグラフや図に書いてイメージ的に覚えてしまう事です。
ここからは損益計算書の5つの項目を全てわかりやすく図表を用いながら確認して行きましょう。
売上総利益とは、会社の製品の販売、サービスの提供の提供等による本業の営業活動によって得た利益の事を指します。
この売上総利益は「売上高」マイナス「売上原価」という公式によって表すことができます。
事業活動を行なっていると「粗利(あらり)」や「粗利益」という言葉を耳にすることが多くありますが、粗利とは、この売上総利益の事を指しているのです。
売上総利益(粗利益)は会社の本業活動による利益です。
ですから、この「粗利益がマイナスの決算」となっている場合は相当な付き合いがあるか本業部分以外の利益が余程大きくならない限り銀行や信用金庫などからの融資を受けることが難しくなります。
また、粗利益の「利益率」が小さなビジネスが主力商品となっているビジネスの場合も市場の影響を受ける事を想定するとマイナス要因となり兼ねません。
会社の本業である粗利益をしっかりプラス計上できる事は会社運営の最低限の基本です。
営業利益とは、製品の販売やサービス等の対価として得る利益を産み出すために必要となる費用を差し引いた利益の事を指します。
この営業利益は「売上総利益」マイナス「販管費」という公式によって表すことができます。
自社製品の販売や自社のサービスを提供する際に発生する広告費や営業活動を行う交通費などは会計上「販管費」として扱われます。
営業活動を円滑に行うために必要となる費用でもあるため、「営業費用」とも呼ばれますが、この販管費の中でも最大のウエイトを占める販管費は「人件費」です。
人件費は製品の販売が仮にゼロであったとしても発生する経費であるため、本業の営業活動全般によって得られた利益が営業力という事になります。
経常利益とは、本業の営業活動以外で発生する利益や損失・費用を差し引いた後に残る利益の事を指します。
尚、会計用語ではこの経常利益は「ケイツネ」とも呼ばれるので覚えておきましょう。
この経常利益は「営業費用」プラス「営業外収益」マイナス「営業外費用」という公式によって表すことができます。
会社の社会的な活動の目的は営業活動などを通じて営利を目的とした活動を行う点にあります。
そして会社が行う営利活動とは、本業の製品やサービスの提供の他、株式や債券などの有価証券や不動産などへの投資業務なども営業活動の一つです。
また営業活動を行う為に金融機関から融資を受けた場合は当たり前ですが「元金の返済」だけでなく「利息の支払い」が発生します。
このように本業の営業活動以外の投資業務や借入金の利息の返済などの項目として算出される利益が経常利益となります。
経常利益は法人の健全な営業活動範囲内おいて発生する収益状況を表す財務諸表の項目でもあり、経営分析においても重要な指標となる点を覚えておく必要があります。
税引前当期純利益とは、投資業務など営利を目的とした企業活動以外で生じる特殊な利益や損失を差し引いたあとに残る利益の事を指します。
この税引前当期純利益は「経常利益」プラス「特別利益」マイナス「特別損失」という公式によって表すことができます。
特別利益とは、一般的な営業活動範囲以外から突発的に得た利益などの項目が対象となる項目です。
例えば役員の生命保険の死亡保険金による収入や、固定資産売却益などが特別利益に該当するケースがあります。
また特別損失に該当する項目としては最も代表的な損失として地震や津波などの自然災害による損失などが計上されます。
税引前当期純利益はその名の通り、税金の課税対象となる最終的な利益ですから、この税引前当期純利益に法人税額や法人住民税を課税することになります。
当期純利益とは、最終的に残った利益である税引前当期純利益から税金を差し引いたあとに残る最終的な利益の事を指します。
この当期純利益は「税引前当期純利益」マイナス「法人税」マイナス「法人住民税」マイナス「法人事業税」という公式によって表すことができます。
会社を経営する際に必ず覚えておくべき最大の費用は税金と言えるかもしれません。
法人は約40%もの税金を支払うと聞いたことがある方も多いかと思います。
この約40%前後とは、「法人税」「住民税」「事業税」の3種類の税金を全て納税した場合のおおよその税率という訳です。
これらの法人税を納税した後に残った利益金は「利益剰余金」として翌年の会社の運営費用として利用する事が可能です。
会社は営業活動を行い利益を上げ、その利益から人件費や販促費などの経費を支払い、残った利益から税金を支払います。
シンプルに数字だけで言えば、これが会社の活動の全てであるとも言えます。
そして会社が黒字であった場合は、その活動から利益剰余金が生み出され、その資金は翌期以降の会社の運転資金として「貸借対照表」の「純資産」に蓄積されていきます。
純資産は株主からの出資金等が記載される項目です。
負債ではありませんから「返済義務」という概念が存在しない資金です。
ですから、会社が黒字決算を続け利益剰余金を積み重ねていく事は、最高の資金調達方法であると考えることもできます。