経営者ナビ >> 会社の税務・節税 >> 接待交際費の上限枠・限度額
接待交際費という言葉は、社会人であれば誰もが一度は耳にする言葉かもしれません。
接待と言えば、食事やゴルフ接待などが以前は主流でしたが、この接待交際費はいったいどのような経理上の扱いとなっているのでしょうか?
ここではまず、企業の会計上、勘定科目に登場する「接待交際費」とはそもそもどのような費用であるのか?
という基本的な点から把握していくことが大切になります。
今回は、接待交際費の税法上の扱いから勘定科目、損金計上するための条件について確認していきましょう。
目次
接待交際費は会社の社長が自由に飲食したり豪遊するための費用などではもちろんありません。
また、取引先への「賄賂」などで使用されている経費でもありません。
接待という言葉から、よくドラマなどで見るような接待のイメージがあるかもしれませんが、実際の本質は企業が営業活動を円滑に進めていく上での欠かせない経費の中の一つに過ぎない事を確認しておきましょう。
※接待交際費とは何か?まずは基本的な概念を学習することがポイント
まず企業、法人の目的は様々な見解がありますが、間違いなくひとつの大きな目的として掲げられるのが「営利を生むこと」が最大の目的であることは間違いありません。
営利とは、営業活動に伴う利益、対価のことです。
会社の目的は営業を行い収益を上げること。そして営利活動を行う上で必要となる最大の経費とも言われる「人件費」や「設備投資費」、「事務用品等の消耗品費」や「交通費」などの経費を計上し、収益から経費を差し引いた「税引き前利益」の金額に対して所定の利率の税金が課税されます。
この目的がずれてしまっては社員を養うことも出きなければ、決算書の状況によっては銀行等の金融機関からの借入金もできなくなってしまいます。
もしこの営利を生む目的がもし無いのであれば、「非営利組織」を設立すれば良いことになります。世の中には名目だけは非営利組織となっているものも多くありますが、ここではさておきやはり法人組織は営利を産み出すことを目的とした活動を行う事が基本的な概念にあります。
尚、余談ですが組織ではなく個人で営利活動を行う場合は個人事業主として税務署へ届け出を出します。
ですから法人企業は、まず何よりも利益を生む事が基本である団体と捉える必要があります。
法的範囲内で堂々と営業を行い利益を生みだし、税法に則り納税をしっかり行う。
納税後の資金は株式配当により株主に還元をする、もしくは内部留保を行い企業の価値を高めることを優先する。
どの法人企業も辿るべき最終的な目的は変わりません。
価値を高めて株式の売却を行う、上場企業へ育てあげて社会に大きく貢献できる組織を作り上げる。
個々それぞれの経営者、経営陣による個人的な思考や目的は異なっているとしても、法人組織の運営、経営に関しては決算書類に残る数字、いわゆる企業の成績表をしっかり残していく作業の繰り返しです。
法人の経営とはこのようなシンプルな活動の継続によって成り立っているのです。
接待交際費は、この営業活動の経費部分に関わってくる勘定科目のひとつです。
一般の経費扱いとなるか?それとも接待交際費となるのか?
後述する上限枠や定額控除制度のパーセンテージを確認すると見えてきますが、この割合は経営上大きな問題となります。
法人が利益を生む為に必要となる費用に関しては、国税局が「必要経費」として損金処理する事を認めております。
個人事業主と法人の大きな違いは個人事業主が支払う事業税と法人が支払う法人税等の税率の違いだけでなく、この必要経費として認められる範囲についても違いがあります。
個人事業が法人なりを果たす目的は、会社組織としての信頼度だけでなく、このような税法上のメリットを考慮して法人成りを果たすケースが大半です。
尚、一定額以上の接待交際費とは、その名の通り、お世話になってる企業、役員、社員の方へ接待を行うことで、「今後も営利関係を築いていきましょうね」という法人組織の本来の目的である営利活動を趣旨とした、言わば必要経費と捉えることもできます。
接待と言えばグレーなイメージが先行するかもしれませんが、どの企業でもクリーンにお礼や今後のお付き合いを円滑に進めていく上での営業上の支出と考える訳です。
※税法では基本的に接待交際費について営業活動を円滑に進めていく上で必要な経費として考える
もちろん、よからぬ目的による接待や度が過ぎる接待は考えものです。
その為、接待交際費は全額が損金扱いになる訳ではなく上限や一定のパーセンテージが定められております。
交際費の損金不算入額は会社の規模(資本金)によって上限額が設定されております。
損金不算入とは、会計上の取扱いとしては費用として計上しますが、税法上の取扱いに関しては税引き前利益として課税対象扱いとなる範囲の事をさします。
交際費はそもそも経費として認められていない費用です。その為、会社の規模に応じて上限枠を設けた控除制度が適用されます。
ここでは交際費の損金不算入制度の特例措置の内容について確認をしておきましょう。
今回は一覧表で簡潔にまとめます。
【資本金の規模による接待交際費損金不算入額の一覧表】 | |
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資本金 | 損金算入可能額 |
1億円以下 | ①800万円を超える部分(800万円以下は全額損金計上可能) |
②接待飲食費の50%以上の部分(50%までは損金計上可能) | |
100億円以下 | 接待飲食費の50%以上の部分(50%までは損金計上可能) |
100億円以上 | 全額損金不可 |
資本金1億円以下の法人は上記表①の通り800万円までは全額損金計上することが可能です。
また②の交際費の50%未満の部分も損金計上できるため、①か②どちらか有利な方を選択する事が可能となります。
また、資本金1億円以上100億円未満の法人は交際費の50%超は損金不算入です。
とは言え資本金1億円を超える企業は、ひと昔前であれば全額が損金不算入であった為、大きな控除制度と捉える事ができます。
但し、今後も景気の変動によって控除条件が変更される可能性があるので定期的な確認が大切です。
基本的に控除制度は延長・継続がなされる事が多い法律ではありますが、あくまでも一時的な控除措置と把握しておきましょう。
では、ここからは判断に迷う交際費の判断基準について確認します。特に交際費の判断基準として注目されている5000円基準の考え方や、交際費として仕訳する際に必要となる保存書類について確認していきましょう。
営業活動の一貫として使用された取引先との飲食や交通費などの経費。
「この経費の勘定科目は接待交際費となるのだろうか?」
このように科目の判断に迷うケースは多くありますが、この問題は企業にとって経営上とても大きなポイントとなる問題です。
一般的に、企業が営利を目的とした営業活動を行う為の経費は、税引き前の利益から損金として全額損金処理することが出来るためです。
社員の給与や、営業に必要となる電話代、オフィスの賃貸料。
これらは純粋に会計上認められている経費となることは容易にわかります。
当然、これらの経費は「全額損金処理」ができる訳です。
しかし、一般経費となるつもりで使用した資金が接待交際費と判断されるような場合は、利益が出ている年度の場合は法人が納税する納税額に影響を与える可能性も出てきます。
接待として執り行う飲み会や宴会。これらの「接待行為」としてみなされる経費は通常「接待交際費」となることは明らかです。
しかし、かなり昔の話になりますが平成18年に接待交際費に関する法改正が行われ、以降は社外の接待者一人につき5000円までの部分に関しては損金処理する事が認められるようになりました。
この法改正のポイントは今まで接待交際費として計上していた経費が、上限はあるものの一人あたり5000円までの部分は全額飲食代などとして損金計上することが可能となったという点にあります。
交際費5000円未満(一人あたり)の部分を全額損金計上する事が可能となったのは前項で解説したとおりです。
但し、国税庁はこれらの適用を認めるにあたり一定の要件を満たす場合という但し書きを掲載しております。
この一定の要件とは基本的に、その接待が明確となる書類の保存義務の事をさしております。
ここでは、簡潔にその保存書類の条件を解説しておくとしましょう。
【保存書類の定義】
☆飲食・接待の執り行われた年月日の記載(領収証で可)
☆飲食費の金額(領収証で可)
☆飲食店の名称・所在地(領収証で可)☆飲食に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称(別途書類を作成)☆得意先・仕入先などの関係(別途書類を作成)
☆飲食に参加した者の数(別途書類を作成)
上記が一定の要件に組み込まれている損金算入条件です。
この条件を見てもわかるとおり、上から3点に関しては一般的に領収証に記載されているものですから、別途記載の必要がないことがわかります。
しかし、下記3項目に関しては、別途書類を作成し、明確にした上で書類を保管しておく必要があるという事になります。
交際費5000円未満の法改正の基準は、あくまで「一人あたりの飲食代」として5000円未満であった場合の適用基準です。
ここで、おそらく気になってくるのが、もし一人当たりの飲食代が5000円を超過した場合の経理上の扱いではないでしょうか?
5000円までの部分に関しては全額損金計上が可能。そしてその超えた部分に関しては、接待交際費として一部課税対象となるのでは?との考え方も当然ある訳です。
給与などの控除などを見ても税法では「累進課税制度」が適用されているものも多くあります。
その為、交際費に関しても一定額を超えた部分は利率が異なってくる?もしくは適用外になる?などの疑問を抱くことは当然です。
しかし、この交際費の法改正に関しては一人当たり5000円を超過した時点で、その全額が接待交際費扱いとなるように定められております。
ですから、5001円になった時点から、その飲食費用などの経費は接待交際費科目として全額が扱われる事となるという訳です。
よく取り扱われる会議費としての経費化ができないかとの分類に関しても、5000円を超えてくるとその全額が接待交際費扱いとなります。
ここで覚えておくべきポイントは5001円の場合は、5000円をオーバーした1円だけが交際費となる訳ではなく、5001円全額が交際費となる点です。
※5000円以上になると交際費扱いに変わる
資本金1億円以下の法人は、資本金の規模による接待交際費損金不算入額の一覧表の項でも解説した通り損益不算入額の控除制度が選択制となっております。
経営者としては合法的に節税を行える方を選択することになるかと思いますが、交際費の5000円基準の取扱いに関しては経営者自身も把握しておくべき項目であると言えます。
接待会場となる飲食店、宴会場への送迎費用についての税法上の見解は基本的に接待交際費による課税対象科目として扱われる事となっております。
前述した法改正で適用された交際費5000円未満の基準は、あくまで飲食店などに直接支払う費用などが基準となっている為です。
送迎費用・交通費は控除の適用範囲扱いとはなりません。
そのため仮に一人当たりの飲食費用と交通費を合算しても5000円に至らない場合であっても、送迎費用に関しては控除の適用とならない点がポイントです。
この場合は、領収証も分かれているでしょうから、5000円未満の部分は一般の経費扱い。
そして交通費や送迎費にあたる費用は接待交際費として扱うことが原則です。
資本金が1億円を超える企業の場合は、飲食などに関わる送迎費などは一切損金扱いできないことになります。
ゴルフ接待は、長年、経営者間の情報交換、人間関係の構築など、様々な目的で行われているビジネスに不可欠な接待費用と言えるかもしれません。
このゴルフ接待に関する費用は、当然接待交際費として扱われるのは誰もがわかる事です。
さすがにゴルフ代は一般経費として扱うことはできません。
しかし、法改正に伴い、ゴルフ接待の最中に行われる飲食代に関しては、やはり一人あたり5000円未満であれば、控除の対象となるのでは?
という見解をお持ちの方もいるでしょう。
ゴルフ接待などの飲食に関しては管轄する税務署などによってもやや見解が異なる部分があるかもしれません。
基本的にゴルフ接待の中の飲食に関しては通常は接待交際費としての扱いが妥当です。
しかし接待交際費は一連の接待行動を通じて、飲食部分は控除適用とするのかどうかを判断していくことが基本です。
このあたりの判断は難しい部分もある為、顧問の税理士や会計士がいる場合は、科目の判断を相談してみるとよいでしょう。
尚、税務署に相談する場合は、しっかりと内容を把握した上で相談することが基本です。
税務署側としては、ゴルフ接待という言葉を聞いただけで、定額控除限度額制度の適用除外範囲と捉える担当者が大半でしょう。