経営者ナビ >> 決算書の読み方 >> 貸借対照表の見方の解説
貸借対照表を初めて目にした時に感じることはおそらく貸借対照表の表示項目が複数に分類されている点ではないでしょうか?
貸借対照表は「バランスシート」とも呼ばれているように必ず左右が等しいバランスとなる財務諸表ですから会計科目が示す項目の意味を理解しないことには貸借対照表を理解することはできません。
多くの決算書に関する解説書を読んでも「貸借対照表の読み方」がなかなか理解できないのは各項目が等しくなるシンプルな構成の把握が難しい点に問題があります。
これから自分自身で会社の設立を検討している方は、このバランスシートを読む力が遅かれ早かれ必ず必要となります。
今回は、とにかく初心者向きにバランスシートの味方のポイントと、バランスシートが難しく感じてしまう迷いやすい原因部分の解説、更にバランスシートを読めるようになると、どの数字に着目し始めるのか?といった一歩含みこんだ部分についても解説を加えております。
会計用語が絡むため一度では解りにくいかと思いますが、バランスシートの大原則である『左右均等』というシンプルな仕組みが解れば、実際の決算で作成される複雑なバランスシートも、おおまかに分類し注目すべきポイントだけを抽出して経営に活かすことができるようになってきます。
私自身はお恥ずかしい話ではありますが会社を2つ潰しており、当時はこのバランスシートの仕組みを理解できていなかった事を後悔しております。
今回は経営の第一歩目となる貸借対照表の役割及びバランスシートの見方を確認していきましょう。
目次
ここからは貸借対照表の入門的な知識として「資産」「負債」「純資産」という3大項目から貸借対照表の構成を把握していきます。
尚、上記図に示されている3大項目の上にある「借方」・「貸方」という会計用語は実は曲者であり、この会計用語に慣れるまではどちら側に記載すべきかわからなくなるような経験をお持ちの方も多いかと思います。
このあたりも、ただ説明を読んで覚えるのではなく、その内容を理解することで今後は「借方」・「貸方」の表記について戸惑うことも少なくなるでしょう。
貸借対照表は左右対称の財務諸表となっておりますが、様式は縦型と横型があり一般的に左右対称として見る貸借対照表は横型様式の財務諸表です。
この貸借対照表を将来的に深く理解する為の覚えやすいポイントは、「右側の貸方の項目」から内容を把握していくことです。
上記図は簡易的な貸借対照表の見本ですが、前項で解説した3大項目は貸借対照表上では、必ずこの見本のように項目が配置される決まりとなっております。(解りやすいように色分けしてありますので前項の図と見比べてみましょう)
ですから必ず左右の金額が一致する貸借対照表における3大項目では「資産」=「負債」プラス「純資産」の公式が成り立つことがわかります。
【貸借対照表】
資産=負債+純資産
各内容はこれから詳細の説明をしますが、ここではまず「資産=負債+純資産」というバランスシートの基本構造をそのまま暗記しておいて下さい。
では次に、右側の貸方に記載されている内容について見ていきます。
貸借対照表の構成は必ず右側に「貸方」、左側に「借方」が配置されます。
では、この貸方とはそもそも何を意味しているのでしょうか?
この答えは、貸方は「資金の調達方法を表している」という答えが正解となります。
会社は営利を目的とする法的な人格を持つ組織ですから、まず営業活動を行うための資金を調達する必要があります。
この資金の調達先が銀行や信用金庫などの金融機関からの調達である場合は、図の貸方1の負債欄に記入され、株式による出資や2期目以降の「利益剰余金」などによる資金調達である場合は、「貸方2の純資産欄」に記入される事になります。
自分が代表取締役となって起業をする場合であっても株式会社の場合は「株式」・「株券」という有価証券を発行し、自分が株主となることで資金調達を行なっている事になります。
ですから法人の設立時の自己出資金は株主として「純資産欄」に株式の出資金額が記載されます。
上図で見た場合は黄色の枠の純資産項目にあなたの出資金が記載されるという意味です。
続いて法人経営のポイントとなる資金調達に関わる「負債」と「純資産」の項目について更に踏み込んで確認していきましょう。
貸借対照表の右側の項目、貸方の欄に記載されている「負債」と「純資産」はともに資金調達方法を記載している事はここまでに解説してきた通りです。
では、どちらも資金調達方法を記載しているにも関わらず、なぜ「負債」と「純資産」の2つの項目に分類する必要があるのでしょうか?
貸借対照表の中の右側の貸方の欄が負債と純資産に分けられている最大のポイントは「返済義務の有無」にある点を覚えておく必要があります。
前述した図の貸方2の純資産にあたる株式や利益剰余金による資金調達の場合は、法人側としては資金の「返済義務」を追わない費用です。
会社は大きな利益があがった時は株主に対して「配当」を行い利益の還元を行いますが、配当は当期純利益の処分の一つであり法人企業にとっては必須義務ではありません。
株式を購入する株主は、返済義務のない有価証券を購入することは大きなリスクともなります。
しかし、配当や株価の上昇を見越して資金を「投資」している訳ですから、資本金は会社にとっては純粋に営業活動につぎ込むことができる「優良な運営資金」であると捉えることができます。
対して、貸方1の負債にあたる金融機関からの融資等による資金調達の場合は、借入した借入金の元本の返済はもちろん「利息」を追加した費用を返済する義務があります。
貸借対照表の同じ貸方の欄に記載されている2つの項目でありながら一方は「純資産」と呼ばれ、もう一方は「負債」と呼ばれている理由は、この返済義務の有無に大きな違いがある為です。
※資金調達によって集めた同じ資金でも返済義務の有無で純資産か負債に分類される
もう感の良い方はここまでで色々な事が見え始めてきているのではないでしょうか。
もし、あなたが株式投資を行う場合、負債が大きく膨れ上がった会社の株の購入はより慎重になるでしょう。
また、純資産の比率が圧倒的に高い会社はそれだけでプラスの検討材料となるかと思います。
実際に会社の善し悪しの判断を行う際は、様々な角度から検討をする必要がありますが、真っ先に数字として表記されるバランスシートのチェックはやはり重要です。
では、続いて貸借対照表の左側に記載されている借方の意味について確認していきましょう。
借方に記載されている項目から、その会社の何が見えてくるのか。
また会社が調達した資金を営業活動や製品の仕入れに運用した場合、貸借対照表にはどのように記載されるのか。
バランスシートが読めるとこのような資金の使い道や資金の用途までを一目で確認できるようになります。
貸借対照表の構成は「右側に貸方」があり、その貸し方は資金調達の方法、資金調達先による返済義務の有無によって分類されている事は前述してきた通りです。
では、続いて貸借対照表の左側の項目である借方とは何を意味しているのでしょうか?
この答えは、借方は「資金の運用方法を表している」という答えが正解となります。
会社は右側の貸方の項目で調達してきた資金を運用して「利益」を上げることが会社の使命です。
ですから、会社は調達した資金で商品の仕入れを行ったり、「有価証券」や「不動産」などの投資業務を行うなどして資金の運用を行います。
ですから左側の借方欄は右側の貸方欄で調達してきた資金がどのような形で運用されているのかを示す指標となります。
貸借対照表は、簡潔に述べると『会社の調達資金』は右に記載、『運用方法や会社が築き上げた資産』は左に記載されることになります。
例えば100万円の資金を調達し、一切の営業活動を行わなかった場合は、右側の貸方欄に「調達資金100万円」、左の側の借方の欄にも「現金100万円」が計上されます。
しかし、会社が営業活動を行うために100万円の現金の半分にあたる50万円分の製品を仕入れたとします。
その場合は、以下の図のように借方欄に「現金が50万円」と「商品50万円」が計上されることになります。
但し、やはり調達してきた資金は100万円と変わりありませんから、「現金」⇒「商品」と記載名目が変化しても貸借対照表の貸方と借方はもちろん同額となります。
貸借対照表がバランスシートと呼ばれている理由は、貸借対照表がこのように「調達した資金」と「資金の運用状況」を示す財務諸表である為なのです。
株式投資を行った事がある方は、四季報に記載されているバランスシートを確認したことがある方も多いかと思います。
資金の流れや運用状況を貸借対照表の数値をもとに確認する事で、その会社がどのような方向性を持って営業活動を続けているのかを見極めるひとつの指標となります。
経営者の方針通り資金が活用されているか否か、数字で確認できる訳ですから重要な指標であるのはある意味当然の事です。
また、自社のバランスシートを定期的に確認する事で資金が効率的に運用されているかどうかをチェックする自社の経営状態を客観的に確認する際の指標ともなります。
これから会社の設立を検討されている方は、会社の資産状況を数値として計上しているバランスシートの読み方を早い段階で把握しておくことがとても重要です。